雲南省、環境配慮型クリーンエネルギー生産体制へ移行
蓄電・制度・水素が交差する「設計型エネルギー拠点」へ進化
中国・雲南省がいま、クリーンエネルギー生産省の枠を超え、「エネルギー経済圏の設計」に本格的に動き出した。これまでの“再生可能エネルギーの生産地”という従来の役割から脱却し、制度設計、需要制御、証明制度を組み合わせた“環境と経済を両立させたクリーンエネルギー産業地”としてのプレゼンスを高めている。注目すべきは、供給量ではなく「使い方」と「信頼性」に軸足を移すことで、企業価値に直結する再エネ経済圏を築きつつある点だ。
雲南省政府が推進する「制度経済」が胎動する2025年、2024年の雲南省政府活動報告の発表では、重点プロジェクト1,775件中、275件がエネルギー関連であり、うち17件(総容量7GWh超)の蓄電所が“重中之重”( 最重要事項)に指定された。楚雄州のバナジウムレドックスフロー電池(300MW/1200MWh)など、調整力のある制御型電源網の構築が急務とされている。
蓄電+緑証(環境認証)、雲南がつくる新たな制度に則る、2024年には新たに200万kWの蓄電、800万kW超の揚水蓄電を整備予定。昆明電力取引センターが主導するグリーン電力市場では、年間取引量16億kWhを突破。ブロックチェーン技術を活用した電力トレーサビリティ制度が導入され、ESG対応やカーボン認証取得を支援。雲南アルミは水力100%のグリーン電力でCO₂排出を80%以上削減し、製品の国際競争力を強化している。

水素、蓄電池、制御ソフトへ広がる“再エネ周辺産業”
雲南省は水素・電池・スマート制御を核にした「再エネ周辺産業」の集積も進めている。昆明市と麗江市では水素ステーションと燃料電池車実証が進み、曲靖市では15km²の電池産業パークが既に稼働している。正極材60.5万トン、負極材20.3万トン、9GWhのPACK蓄電池生産体制が整ったことにより、今後、銅箔・アルミ箔製造日本企業との部材協業の可能性が高くなった。
- 注目事例
昆明電線グループ 2024年、電力使用量を前年比13.4%削減、CO₂排出1.75万トン削減。屋上太陽光11.88MW、年発電量1,760万kWhを自社消費。「国家グリーン工場」「ESG貢献TOP10」に選出され、モデルケースとして注目される。
電気の価値は、発電量ではなく「透明性」と「選択肢」によって決まる時代がやってきており、雲南省は、国家を超えて、エネルギーの未来を創出する先駆者として、内外から期待されている。